ザザムシの加工・販売をしている店にやってきた

次にやってきたのは、地元漁師からザザムシを買い取って佃煮にして販売している産直市場グリーンファームという直売所。高速道路のパーキングエリアや道の駅と違って、主に地元の人が通う店である。

ここでは地元の野菜などと並んで、サナギ、ハチノコ、ザザムシなどの伊那特有の食材が当たり前に売られていて、とてもよく売れているそうだ。

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道の駅よりも地域密着な産直市場グリーンファーム。

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ザザムシ、サナギ、イナゴ、ハチノコなどの虫料理が揃った伊那らしい店。

この店の会長の話だと、やはりザザムシなどの虫料理は地元の人や帰省客が自宅用やちょっとしたお土産用に買っていくようだ。ザザムシは東京あたりでいう和菓子とかケーキみたいな扱いなのだろうか。長野以外からたまたまきた人が買うことはまずないそうだ。

「虫だからなあ」と笑う会長さん。

確かに虫ですからねえ。

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グリーンファーム会長の小林さん。

「ザザムシはどこの川にも多少はいるだろうけれど、食べるのはここ伊那だけなんだよね。特別これはうまいっていうものではないけれど、元々人類はこういうものを食べてきたんだなという本能的な哀愁があるんじゃないかな。現代っ子はあまり食べないだろうね。でもうちの孫は好きでねーっていう人もたまにいる。伊那の遺伝子は健在です。虫を食べる文化がなくなることはないですよ。」

このあたりでは山菜やキノコ、ハチノコやイナゴなどを季節にあわせて収穫して食べる文化が根付いているのだが、その中でもザザムシ獲りはちょっと高級感があって、ステータスを感じる遊びなのだそうだ。

ザザムシは三日煮続ける

加工の様子も見させていただいたのだが、ザザムシの佃煮はそれなりに長い時間(4時間くらい?)煮るのだろうなという予想はしていたのだが、この店ではその予想を大きく上回る驚異の三日煮込み。ヒタヒタだった煮汁がまったくなくなるくらいまで弱火で炊き続けるのがコツらしい。

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毎日大鍋でザザムシやイナゴを煮ているそうです。

大鍋に二日目のものと三日目のものがあったのだが、二日目はまだオリジナルの色を感じさせてくれるが(といっても元が茶色だけど)、三日目ともなるとヒジキのように真っ黒だ。

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こちらが二日間煮詰めたザザムシ。

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こちらが三日間煮続けたザザムシ。ここまで煮詰めないとダメらしいぞ。

さすがにここまで煮詰める必要なんてないんじゃないかと試しに二日目のザザムシ(カレーみたいな表現ですね)を食べさせてもらったところ、クラっとくるほどにザザムシ。口の中ではっきりと主張する虫の味。虫のお腹の中の味がするよ。

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ごめんなさい、二日目のザザムシはハイブロー過ぎました。

一度小森さんの家でザザムシを食べて大丈夫だったので油断していたところがあったのだが、これはなかなか強烈である。同行したカメラマンは「僕はこれくらいクセのあるのが好きですよ」といっていたので、好みや慣れの問題といえばそれまでなのだが。

会長は酒が欲しくなる味でしょうというが、確かにザザムシを食べた後に味のしっかりした黄色っぽい地酒を飲んだらさぞうまいだろう。ホンオフェという韓国の臭いエイ料理にマッコリが合うのと同じ理屈か。

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「ほら、高級なものなのだからそんな顔しないで、おいしそうな顔しなさい。」

続けてドキドキしながら三日目のザザムシを食べさせていただいたところ、これは安心の味だった。一般的な食べ物としての完成度が高くなっている。生産者を前にして食べるのに助かる味だ。後味はやっぱり虫だけど。

ただこれに馴れてしまうと、食通がだんだんと臭いチーズを欲しがるように、もっとクセの強い二日目のザザムシみたいなのが食べたくなってくるような気もする。

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三日目なら大丈夫!

ザザムシを食べるのは食文化

今回の取材を通して、その土地の味覚は文化そのものであるということが実感としてよくわかった。

ザザムシを食べるという行為は、食べるものが他にないからという単純なのものではなく、「冬場の貴重なタンパク質」であると同時に、そこに収穫する楽しみがあったり、それを時間を掛けて調理することに一種の達成感があったりと、昨日今日の流行りに流されることのない喜びと営みがある。そういう「思い」があるからこそ、今でも伊那の人は買ってまでざざむしを食べるのだと思う。

とりあえず、よその人が「虫を食べるなんて」と、眉間にしわを寄せてとやかく言うべきものではないということだけは確かなようだ。

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ザザムシに対する「思い」がないので、自分で買ってまで食べようとは思わないが、買って食べる人がいても変に思わなくなった。

【参考】
産直市場グリーンファーム

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コメント

  1. 伊那谷在住の者です。
    しっかり取材されていて、地元としても嬉しいコラムでした。

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