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「漁業という日本の問題」「日本の魚は大丈夫か」の著書である、三重大学生物資源学部准教授の勝川俊雄さんに、日本の漁業の問題点と、我々消費者がやるべきことを聞いてきた。このままだと、確実にダメになるみたいです。

日本の漁業が、無規制の乱獲によって崩壊している

地球のココロ編集部の清水さんから、三重大学生物資源学部准教授の勝川俊雄さんに、ぜひインタビューをしてほしいという連絡をいただいた。

大学の先生にインタビューなんて荷が重そうだなとは思いつつ、とりあえず勝川さんの書かれた「漁業という日本の問題」、「日本の魚は大丈夫か」の二冊を読んでみると、消費者の立場からは知りえなかった日本の漁業に関する重大な問題が、目の前に突き出された感じがした。

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気になるところに付箋を貼ると、付箋だらけになる本です。

このままいけば、早い者勝ちによる乱獲をせざるを得ない漁業制度によって、日本の海から魚がどんどんいなくなってしまう。

この本を読んでいて、胃がキリキリと痛んだ。

ということで、どうぞ皆さんも、この勝川さんへのインタビューを読んで、一緒に胃をキリキリさせてください。

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編集部の清水さんと三重大学までいってきました。

ウナギは食べてもいいのでしょうか?

このインタビューの発端は、地球のココロ編集部の清水さんが、お昼御飯にウナギを食べていいのか迷ったことから始まっている。

清水:「この前、お昼にランチを食べに行った店が、ウナギと焼き鳥の店だったんです。メニューに『国産のウナギ、あります!』ってデカデカと載っていたのですが、テレビではウナギの稚魚不足で値段が高騰というニュースが流されていました。店員さんにおすすめされて食べたのですが、本当に食べてよかったのかなというのが気になって、ツイッター(https://twitter.com/katukawa)や著書を拝見させていただいていた勝川先生の意見が聞きたくて、勢いでメールさせていただきました。」

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地球のココロ編集部の清水さん。

勝川:「ウナギはね、稚魚の漁獲量も成魚の漁獲量もすごく減っています。研究者なら誰に聞いてもそういうと思うんですけれど、かなり危機的な状況まで減っています。それもここ何年か減っているという話ではなく、もう何十年も減少傾向なものを放置しておいて、今に至っている訳です。」

「ウナギがここまで減った理由というのは、一体なんなのですか。」

「いくつかの要因があって、まず河川の工事。ダムや堤防などの建設によって、ウナギの住処が奪われたということ。そして河口で網を張って根こそぎ獲っちゃうような獲り方ですね。水産資源は減りすぎると、元に戻る力が失われてしまうんです。だから、養殖業者や蒲焼屋がバタバタと倒れちゃう前に、きちんと産卵する魚を海に戻すための環境整備なり、漁獲規制なりをしなければならなかったんです。再生産していく環境があれば、今みたいに減らなかったはずです。」

「何十年にも及ぶ環境破壊と乱獲が原因ということですか。」

「何十年もの間、なんでなにもしなかったのかということを含めて、我々は考えていかなければならないと思うんですよね。ウナギに関して言うと、もう既に手遅れかもしれない。一方でシラスウナギ(養殖をするためのウナギの稚魚)が高騰しているため、密漁などを含めて、対応が難しくなっています。これが今後、すんなりと実効性のある対応策が出てくるとは思えないんです。

玉置:「自分もウナギ釣りをしたり、安いウナギを食べたりするので偉そうなことは言えないですが、そこまでひどい状況だとは思っていませんでした。」

「ウナギは大回遊する生息域の広い魚です。中国とか台湾を含めて、親を海へと産卵回遊させる枠組みをつくるための時間というのは限られています。国の方もようやく動き出しましたが、中国、台湾と、なにかやらなきゃいけませんねっていう会をやっただけ。具体的に何かっていう段階ではないし、ここまで減ってしまうと、仮に全面禁漁したとしても、回復するかどうかかなり微妙な水準です。」

ヨーロッパウナギを食べつくした日本人

「日本のウナギだけではなく、ヨーロッパのウナギも激減しています。ヨーロッパでは2008年からほぼ禁漁に近い措置をとっているけれど、全然回復していないんですね。」

「ヨーロッパのウナギが激減したのは、中国などでウナギを養殖するために、ヨーロッパの漁師がシラスウナギを獲りつくしたということですか。」

「そうです。そして、その輸出先は日本です。でも日本人はヨーロッパウナギを大切に食べていたでしょうか。今日は手抜きをしたいからとか、国産ウナギが高いからとか、そんな感じ。はっきりいえば食べ散らかしてきたのです。その結果がどうなったのかというと、ヨーロッパウナギを激減させて、現地の伝統的な食文化を破壊してしまった。しかも、そういうことを日本の消費者はまるで知らない。」

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三重大学生物資源学部准教授の勝川俊雄さん。

「すみません、知りませんでした。」

「誰も伝えないから、知りようがないですよね。ある意味、日本の消費者の意識はすごく低いですけど、それは情報が与えられていないから、仕方がない面もあります。でも、こういう話をしていくと、ちゃんとやらないとダメだよねっと、みんな言ってくれます。」

「はい。話を聞けてよかったです。」

「マスメディアの報道をみていても、ウナギが減って漁師や養殖業者が大変ですとか、今度はアフリカから輸入しましょうとか、完全養殖をがんばりましょうとか、そういう報道ばかり。自分の国にこんな良いウナギ資源があったのに、ヨーロッパを含めてこんな状態にしてしまったという反省が全然ないんです。」

「2007年にヨーロッパウナギがワシントン条約で規制されたときにも、日本の消費者は『安いウナギが食べられなくなる!』みたいな被害者側の感覚があったかもしれません。」

「これを機会に考えて欲しいんですよ。我々の魚食は、天然の生態系に依存しています。野生生物を食べる以上、その持続性に対して、我々一人ひとりが責任を負っているんだという意識をもってほしい。おいしい、おいしいと食べるだけではなく、この『おいしい』を未来に残していくために、我々は食べ方を考えなくてはいけない。ウナギっていうのは一つの文化じゃないですか。それがウナギ資源を食べつくしてしまうことによって、おそらく近い将来食べられなくなる。これは未来の世代に対して申し訳ないことだと思うんですよね。」

「食べられなくなる...。」

「ここで大切なのは、ウナギがこんなことになってしまって、そこから学ばなければならないということ。こういうことを繰り返してはいけない。」

ここから話は日本の漁業全体における問題へと進んでいきます。今後も魚を食べたいと思っている人は、ぜひ続けて読んでみてください。

このままでは、ウナギだけではなく、マグロもサバも食べられない未来が待っているようです。

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コメント

  1. 顔本とツイッターで紹介させて頂きました。漁業資源に関して常々私が思っていた事です。記事にして下さってありがとうございます。本当にこれに関しては、日本人は自分で自分の首を絞めている様にしか見えません。
    秋田の鰰(ハタハタ)で出来た事なんですから、他の魚で出来ない訳がないんです!
    今回の鰻にしても、以前のマグロにしてもそうですが、マスコミの「規制のせいで食べられなくなる!」一辺倒の狭く浅〜〜〜い見地と、問題の根底にある「何故」を問わない姿勢に心底腹が立っていました。世界でも有数の島国で、排他的経済水域も確か世界5位か6位の広さを持つのに「海からの視点」が足りなすぎです。
    ついでに言うなら、これは単に水産資源の問題だけではなく、日本の国際的な信用にも関わってくる問題です。自滅が明らかな自国の漁業を統制出来ず、当然の結果として、他国にも迷惑かける様な国が国際社会で信用されるかってんです。私はグリンピースが大嫌いで、環境NGOも大半が話の通じないクレーマーで、シーシェパードは全員泥舟に乗って北極海に沈めば良いと思っていますが、これでは捕鯨に関して日本の主張が認められなくて当然です。いくら文化だ、調査だ、頭数は管理している、資源量は回復している、と言ったって(そしてそれがどんだけ正しくても)「ふ〜ん、で、鰻は?マグロは?鯖は?蟹は?」と鼻で笑われて終わりです。
    本来であれば日本が旗ふり役となって東南アジアの水産資源管理の枠組みを作るべきなんです。遺伝子資源に関してはちゃんとやってんだから水産資源でもやれんだろっっ!!!

  2. ところで、昭和63年から平成2年にかけて国内生産が激減していますが、一体何があったんですか?

  3. こういうエモーショナルなお話では、みんな知らんぷり決め込むか、
    口先では反発をする人が大半で、文化論に歩調を合わせられて
    弾かれるのがオチではないでしょうかねぇ。
    やるせないからエモーショナルになっちゃうんでしょうけど。
    読んで釈然としなかったのは、乱獲の要因を漁民や漁連に求めているところ。
    まあそれもあるのでしょうけども、沢山獲るのはやはり需要があるからであって、
    その需要の源はなんやねんという話になると、消費者というよりは、消費者を
    目当てとした各種小売業者にあるのでは、と思うんですよね。
    スーパーの新店が出来れば当然売り物は確保せねばならないわけで、魚もっと
    寄越せ~になるでしょう。新鮮(そう)な魚が沢山あれば、店の見栄えもいい
    でしょうしww 安売り回転寿司もそんな一角でしょうか。
    このへんは多分に日本独特な事情だと思います。
    私の最寄り駅にも最近できた24時間スーパーがありますが、さきほど22:00
    くらいに寄っても、魚が結構売れ残ってました。
    でも店全体の仕入原価を全体の売上が上回れば、魚が何匹売れ残って廃棄され
    ようが、知るかボケって話ですよね!
    魚を沢山置けて品揃えの良い新鮮な店と思ってもらえれば、売残り上等みたい感じ
    ではないかな~と。
    我々が食いつくす以前の、オーバーストアなどの流通上の問題の方が重い気が
    するんですけどね~。我々がたべるからオーバーストアなんでしょうか。

  4. 外食産業に従事する底辺・低賃金店員です。心が痛む記事です。
    我々がお客様に提供する低価格の魚料理。魚に限らず、他の食材も。
    鰻は、冷凍で入荷します。串刺しの状態で、温めればすぐ食べられるようになっています。どこから来ているのか、スタッフは気にしません。お客様も、原産国をお尋ねになるかたは皆無です。激安ですから。
    食文化は国の根幹であるはずですが、エンドユーザーに知らされないことが多過ぎること、知らされれば我々外食産業が生き残れないこと、何もかもが歪んでいます。自分が生きていくために、三猿になっている毎日です。
    良い記事をありがとうございます。

  5. いま水産庁がファストフィッシュ運動やってますよね。食育とかそういうのも絡んでいます。魚食って政治的保守層のスローガンなんですよね。
    そのへんまでつっこんでいただけるとホンモノかなと存じます。
    Fast Fish(ファストフィッシュ)とは手軽・気軽においしく、水産物を食べること及びそれを可能にする商品や食べ方のことで、今後普及の可能性を有し、水産物の消費拡大に資するものです。 (水産庁)

  6. このような状況になっているとは、全く知りませんでした。。。
    勉強になりました。
    ありがとうございます。

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