資源管理で漁業が立ち直った国がある

「私は放射能問題から先生の本を読んだクチなのですが、本を読んで初めて魚がそんなに足りないんだ!っていうのがわかりました。日本は魚が減っていますっていう報道がないからだと思うのですが、なんでそこまで隠しているというか、消費者が気づかないようにしているのでしょうか。」

「漁業って知っているようで知らないじゃないですか。日本の伝統的な産業で、身近にあるような気がするけれど、ほとんどの人は、漁業の現場を見たこともなければ、漁業者に知り合いもない。というのも、漁業っていうのは閉鎖された隔離社会で、外部との接点がすごく少ないんです。その中で、漁業者がわざわざ自分の都合が悪いことを外にいう訳ないですよね。現場を知っているのは業界関係者しかいないんです。」

「だから何十年も隠してきてしまったということなんですね。」

「漁業関係者がそういうふうに問題に向きあってこなかったが故にこんなになっちゃったというのはある訳です。もうこれはちゃんと社会として取り組んでいかなければならない問題であって、漁業関係者の都合だけで決めて良い問題ではない。未来の食卓が掛かっていますから、きちんと情報を出して、さあどうするということを、消費者を含めて考えていかなければいけない。」

「でも海の魚は漁業権を持っている漁師のものという感じがして、一般消費者側から漁業者に対して、なにもいえないような印象があります。」

「漁師も、海は自分たちのものだと思っているけれど、実はそうじゃないんです。排他的に漁をする権利を彼らは与えられているだけであって、後は野となれ山となれみたいな獲り方をする権利はないんです。国連海洋法条約というのがあって、その条約によって日本も200海里の資源を排他的に利用できる権利を得ているんですけれど、その条約によると、水産物は人類共用の財産となっています。ただ、みんなが無規制で捕ったら乱獲になってしまうから、沿岸国がきちんと持続的に利用する義務を負う代わりに、排他的に使っていいですよということになっているんですね。」

「単純に自分の国の海として、自由に使っていいという話ではないと。」

「だから日本が200海里の水産資源を排他的に利用する以上、持続的に管理する義務を負っているんです。国際法的に見ても、今のように資源管理をしていない状態は、無責任と言われても反論しようがないですよ。きちんとした漁獲規制をやっていないが故に魚がどんどん減っている現状は、消費者にとっても、漁師にとっても不幸だし、国際条約違反で、国としても無責任です。」

「資源管理をちゃんとやって成功している国というのが、本に書かれていたノルウェーとかニュージーランドなのですね。」

「実際に現地へ行って、行政とか漁業者とか組合に聞きとり調査をしましたが、どっちの国も漁業者は最初反対しているんです。やっぱり規制って嫌じゃないですか。今まで好きなだけ獲れていたものが、獲る量を決められてしまう訳です。今でも生活が厳しいのにどうするの?ってみんな思うわけですよ。だからどっちの国の漁業者も猛反対した。」

「漁業者側が反対するのはなんとなくわかります。それでも漁獲規制を導入できた理由はなんなのでしょうか。」

「この二つの国は環境保護団体の力がすごく強くて、規制を入れさせちゃったんです。でも漁獲できる上限が決まっていた方が、漁師は大きい魚を狙って獲るようになるから、魚価も上がるし、魚も増えるしで、5年もしないうちに漁業がどんどん儲かるようになったんです。」

「確かに先生の本にありましたが、10円玉と500円玉が混在している状況で、早い者勝ちで好きなだけもらえるとなれば、それが10円玉だろうとあるだけ持って帰ろうとしますが、決められた枚数しか持って帰ってはいけないというルールならば、10円玉にあたる未成魚は見逃して、成魚にあたる500円玉だけをがんばって集めますね。そして10円玉が500円玉に育っていく。」

「漁業が儲かるようになると、どちらの国の漁業者も、資源管理は必要だと意識が変わる訳です。やってみてうまくいくと、みんな現金なもので、そのシステムを支持するんです。ノルウェー、ニュージーランドが資源管理を始めた時は、成功例がなかったんですよ。今はそういう風にやればいいんだと世界中がわかったから、自分の国の漁業に個別漁獲枠制度という資源管理を、どうやって入れようかという議論をしているのに、未だになにもやっていないのが日本なんですよね。ちゃんとやるようにと問題提起し続けているのですが、結局やらない理由を並べて終わりですからね。」

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コメント

  1. 顔本とツイッターで紹介させて頂きました。漁業資源に関して常々私が思っていた事です。記事にして下さってありがとうございます。本当にこれに関しては、日本人は自分で自分の首を絞めている様にしか見えません。
    秋田の鰰(ハタハタ)で出来た事なんですから、他の魚で出来ない訳がないんです!
    今回の鰻にしても、以前のマグロにしてもそうですが、マスコミの「規制のせいで食べられなくなる!」一辺倒の狭く浅〜〜〜い見地と、問題の根底にある「何故」を問わない姿勢に心底腹が立っていました。世界でも有数の島国で、排他的経済水域も確か世界5位か6位の広さを持つのに「海からの視点」が足りなすぎです。
    ついでに言うなら、これは単に水産資源の問題だけではなく、日本の国際的な信用にも関わってくる問題です。自滅が明らかな自国の漁業を統制出来ず、当然の結果として、他国にも迷惑かける様な国が国際社会で信用されるかってんです。私はグリンピースが大嫌いで、環境NGOも大半が話の通じないクレーマーで、シーシェパードは全員泥舟に乗って北極海に沈めば良いと思っていますが、これでは捕鯨に関して日本の主張が認められなくて当然です。いくら文化だ、調査だ、頭数は管理している、資源量は回復している、と言ったって(そしてそれがどんだけ正しくても)「ふ〜ん、で、鰻は?マグロは?鯖は?蟹は?」と鼻で笑われて終わりです。
    本来であれば日本が旗ふり役となって東南アジアの水産資源管理の枠組みを作るべきなんです。遺伝子資源に関してはちゃんとやってんだから水産資源でもやれんだろっっ!!!

  2. ところで、昭和63年から平成2年にかけて国内生産が激減していますが、一体何があったんですか?

  3. こういうエモーショナルなお話では、みんな知らんぷり決め込むか、
    口先では反発をする人が大半で、文化論に歩調を合わせられて
    弾かれるのがオチではないでしょうかねぇ。
    やるせないからエモーショナルになっちゃうんでしょうけど。
    読んで釈然としなかったのは、乱獲の要因を漁民や漁連に求めているところ。
    まあそれもあるのでしょうけども、沢山獲るのはやはり需要があるからであって、
    その需要の源はなんやねんという話になると、消費者というよりは、消費者を
    目当てとした各種小売業者にあるのでは、と思うんですよね。
    スーパーの新店が出来れば当然売り物は確保せねばならないわけで、魚もっと
    寄越せ~になるでしょう。新鮮(そう)な魚が沢山あれば、店の見栄えもいい
    でしょうしww 安売り回転寿司もそんな一角でしょうか。
    このへんは多分に日本独特な事情だと思います。
    私の最寄り駅にも最近できた24時間スーパーがありますが、さきほど22:00
    くらいに寄っても、魚が結構売れ残ってました。
    でも店全体の仕入原価を全体の売上が上回れば、魚が何匹売れ残って廃棄され
    ようが、知るかボケって話ですよね!
    魚を沢山置けて品揃えの良い新鮮な店と思ってもらえれば、売残り上等みたい感じ
    ではないかな~と。
    我々が食いつくす以前の、オーバーストアなどの流通上の問題の方が重い気が
    するんですけどね~。我々がたべるからオーバーストアなんでしょうか。

  4. 外食産業に従事する底辺・低賃金店員です。心が痛む記事です。
    我々がお客様に提供する低価格の魚料理。魚に限らず、他の食材も。
    鰻は、冷凍で入荷します。串刺しの状態で、温めればすぐ食べられるようになっています。どこから来ているのか、スタッフは気にしません。お客様も、原産国をお尋ねになるかたは皆無です。激安ですから。
    食文化は国の根幹であるはずですが、エンドユーザーに知らされないことが多過ぎること、知らされれば我々外食産業が生き残れないこと、何もかもが歪んでいます。自分が生きていくために、三猿になっている毎日です。
    良い記事をありがとうございます。

  5. いま水産庁がファストフィッシュ運動やってますよね。食育とかそういうのも絡んでいます。魚食って政治的保守層のスローガンなんですよね。
    そのへんまでつっこんでいただけるとホンモノかなと存じます。
    Fast Fish(ファストフィッシュ)とは手軽・気軽においしく、水産物を食べること及びそれを可能にする商品や食べ方のことで、今後普及の可能性を有し、水産物の消費拡大に資するものです。 (水産庁)

  6. このような状況になっているとは、全く知りませんでした。。。
    勉強になりました。
    ありがとうございます。

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