最終的には現地まで食べにくるモデルケースをつくりたい

価値のないとされている魚介類に、オリジナルの価値を持たせて適正な価格で売るだけで終わりではなく、勝川先生の目標は、もう少し深いところにあるようだ。

「これを普通にスーパーに並べていても、誰も食べ方を知らないから売れません。でもこれが飲食チェーンだったら、自分のところで板前がちゃんと処理すればいいだけの話だから、買えるんですよ。今までは全部海に戻していたものが売れるようになって、今まで1日3万円だった水揚げが数倍になりました。今は菅野さんという漁師が一人で獲っているから、品川店で入荷のあるときだけしか食べられないみたいですが。」

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店内には菅野さんの写真が。まさに魚を獲った漁師の顔が見えるお店。

「独自性があって、味がいい商品なんて、漁師にとっても提供する店にとっても、最高ですね。」

「この前、菅野さん達とその店に招待されて一緒にいったのですが、菅野さんがトイレに行って帰ってこないんですよ。何しているのかと思ったら、カウンターの客に俺が獲った貝なんだよって嬉しそうに説明していた。これってどっちにもいいんですよね。消費者にしてみれば、まさか獲った漁師が説明してくれるとは思わないし、漁師にしてみれば、自分が獲ったものを食べてくれる人の顔が見えるなんて、今後のやりがいになりますから。」

「漁師と消費者、どっちも満足度が上がりますね。」

「生産者と消費者の距離を縮めることで、新しい価値が出ます。大切なのは、安く売ることではなく、消費者の満足度を上げること。獲った人の顔が見える魚って価値があるんだなと実感しました。一緒に来た漁師仲間もやる気になって、今は地元にケツブの加工場を作ろうかという話になっています。可食部が少ないから、加工してから真空パックで送れば、送料も浮くし地元の雇用にもつながる。こうやって地域がうまく回っていけばいいですよね。そしてその次は
やっぱり地元に客を呼びたい。」

「東京の居酒屋で広田町の魚を食べてファンになった人に、今度は広田町まで来てもらって、さらに新鮮な魚を食べに来てほしいと。」

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四十八漁場には、持続可能漁法をキーワードに、各地から漁師直結で魚が届いている。ちなみに四十八漁場の意味は、科学専門誌「サイエンス」で、乱獲によって天然魚介類が壊滅するかもしれないと報告された2048年以降も、この日本で美味しい魚が食べられますようにという願いが込められている。

「水産物を東京に売っても、その先がない。そうじゃなくて、食べに来てもらうのが理想です。たとえば京都に間人ガニ(たいざがに)というブランドのズワイカニがありますが、それを食べに毎年100万人も冬の京都に来ます。アンケートを取ったら、カニがなかったら8割の人は京都に来ないという。ってことは、このカニの経済効果たるや、地域への貢献は漁獲高のみではないですよね。僕としては、広田町でこういう新しい仕組みをつくって、こういう風にやればいいんだねっていうモデルケースを作りたいんです。」

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店員さんからの素材の説明を含め、とても満足度の高い店でした。

「なんだか漁業の話だけでなく、地域活性化の話になってきまいたが、それも先生の範疇なんですか?そこまで考えて実際に行動をしている水産学の先生って、他にいないと思いますが。」

「うーん。僕が思うのは、水産学って実学なんですよね。水産業がこんなになっているのに、水産学の学者が大学に引きこもって論文を書いているだけではダメです。水産業がなくなったら、水産学なんて存在しえないじゃないですか。日本の水産業が生き残ってくれないと、僕自身困る訳です。漁業者は本当にみんな困っているんです。今までのやり方じゃ先はないけれど、どうしていいのかわからない。そういう困っている人がいるときに、自分の専門知識を使って手助けできるのであれば、それはもう実学研究者冥利に尽きるというか、なにをおいてもやらなければならないですよね。」

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気にいったので、ここに就職しました。というのはウソで、ポイントカード代わりの名刺をもらいました。

なんだか店の宣伝みたいになってしまったが、ここで言いたかったことは、消費者がちゃんと価値のある魚を適正価格で食べることが、継続的な漁業のサポートにつながるのではないかという話である。

三陸の復興への道は、まだまだ未整備の険しい道が多いと思うが、その道は今までの漁業が進んできてしまった道とは違う、明るい未来へとつながる道であると信じたい。

とりあえずケツブはおいしかったので、広田町までいって菅野さんを取材しにいきたくなりました。

【参考サイト】
勝川俊雄 公式サイト
エー・ピーカンパニー

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