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先月『節電母さん』というマンガが発売された。『毎日かあさん』や『ちびまるこちゃん』が好きな人にはたまらない、ほのぼのとした作風なのだが、内容は驚きの連続。掃除は手作りの箒で。洗濯は風呂の残り湯と洗濯板で。きわめつけに冷蔵庫すらない。実際の暮らしを見てみたい、もっとお話を伺いたいと思い、モデルとなった家庭を訪ねてみた。

マンガの通りのお宅を訪問する

JR五日市線沿線の住宅街にあるお宅は、お年寄りの家のようなたたずまい。本当にインターホンに「ご用のかたはベルを鳴らしてください」と丁寧な手書きのシールが貼られていた。待機電力がもったいないからと、インターホンは使っていないのだ。マンガの答え合わせをしに来たみたいだなあと思いながら、ベルを鳴らす。「節電母さん」ことアズマカナコさんが出迎えてくださった。室内にお邪魔すると、ひかえめにラジオの音が聞こえ、天井には電球がついていた。

―― あれ、電気使ってますね!?

思わず、よその家では絶対出てこない言葉が口をつく。昼間から明かりをつけて大丈夫かしらと妙に心配になってしまう。

「今日は曇りなので。ラジオも、たいして料金に響かないんですよ」

テレビは消費電力が大きいと聞いたことがあるが、その点、ラジオは優秀なのだそうだ。明かりの下には掘りごたつ。

―― これがマンガに出てきた、木炭のこたつですね。

「遠赤外線の効果で、温泉に入っているみたいに温まりますよ」

こたつ布団をめくると、下に赤く炭が燃えているのが見える。初めて体験する木炭のこたつは、匂いがするわけでも、煙が出てくるわけでもなかった。心地よい温かさが足を包む。炭は燃料問屋で購入されるとのこと。アウトドア用品店で買われるのかとも思ったが、室内用とキャンプ用とでは炭の種類が違うのだそうだ。こたつの傍らにある、炭コーナーを見せていただく。

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左上から時計回りに、マンガに出てきた「火起こし器」、灰、新しい木炭、使いかけの消し炭。

新しい木炭よりも、消し炭のほうが着火しやすいとのこと。また、火のついた炭を灰の中に埋めておくと、火はついたままで炭の消耗を防ぐことができ、灰から出せばすぐ使えるのだそうだ。「意外と便利なんですよ」とアズマさんが嬉しそうに説明してくださる。炭を扱ったことのない私には、超人のように感じられる。

こたつの上にはお昼の支度が整っていた。具だくさんのお味噌汁、醤油麹とかつおぶしの可愛らしい三角おむすび、ひじき煮、切り干し大根、ブロッコリー。味噌は自家製。

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切り干し大根は家庭菜園の大根をご自身で切り干しにしたもの。

やさしい口当たりのお茶は、番茶に自家製のどくだみをブレンドしたもの。美味しいおもてなしにすっかりくつろぎながら、本が出るまでのいきさつを伺った。

「偶然の積み重ねなんです。新聞に『節電で月の電気代が500円程度になった、冷蔵庫がなくても楽しく暮らせる』という投書をしたのが2012年5月に掲載されたんですが、それに対して苦情が来たそうなんです。『東京で30代の主婦が冷蔵庫もなしに生活しているなんてありえない。新聞はそんなウソを載せるのか。ちゃんと確認してから記事を載せるべきだ』って。それで記者のかたが取材にみえて、7月に記事が載ったんです。偶然その記事を見た集英社の垣内さんが、本にしませんかと連絡をくださって。びっくりして、最初はいたずらかと思いました(笑)。垣内さんも長年マンガの編集をされていたのが、ビジネス書の部署に異動された直後で、著者を探しているところだったそうなんです。だから新聞社にクレームがなければ、垣内さんがその記事を見なければ、本にはならなかったんですよ」

―― でも、この本が出たほかにも、節電や、アズマさんのご著書(『布おむつで育ててみよう』『捨てない贅沢』など)に関して、いろいろな雑誌から取材を受けていらっしゃいますよね。

じつはアズマさんが地球のココロに登場されるのはこれが2回目。約2年前に「おむつなし育児のお茶会へようこそ」という記事で、お茶会の進行役を務めていたのがアズマさんだった。このとき初めてお会いしてから、私の読む雑誌に頻繁にアズマさんが登場されるので、活躍されているなあと嬉しく思っていたものだった。

―― 取材件数がどんどん増えているのではないでしょうか。

「そうでもないです。震災からある程度時間が過ぎて、節電の取材は、ぐっと減りましたね」

―― 波があったんですね。いつごろが多かったんですか。やはり震災直後でしょうか。

「直後というよりも、少ししてから。電気代が値上がりするころだったと思います」

―― 夏ごろでしたっけ。そのときだけ集中的に取材が来たけれど、いまはもう、喉元過ぎればという感じなのでしょうか。震災から2年ですが、過ぎたことのようになってしまうのは悲しいですよね。

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コメント

  1. 担当の編集さんが知り合いだった縁で、『節電母さん』拝読しました。
    こんなご時世だからこそイキイキと輝くスローライフ、エンジョイしているアズマさんのお人柄が伝わってきました。
    このところ「不便」「非効率」なことにこそ価値を見出したいと思っていたので、その意味でも示唆に富んだ記事、ありがとうございました。

  2. >青木ポンチさん
    コメントありがとうございます!
     
    私は教育関係の仕事もしているのですが
    以前その現場で先輩が
    「子供が育つ上では、昔の日本の家はすごくいい」
    とおっしゃっていたのがすごく印象に残っています。
     
    いまは扉の前に立てば自動で開き
    蛇口の前に手を伸ばせば水が出るような時代ですが
    便利さゆえに、自分でできることがどんどん狭くなっている気もします。
    (転んだときに、とっさに手がつけない子供が増えているとか、、)
     
    「不便」「非効率」の中でも
    楽しく、たくましく生きていける人間でありたいですよね。

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