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※角川書店ウェブサイト・『里山資本主義』特設ページから引用

「里山を活用すれば、原価ゼロ円で日本経済を『再生』できる」。そんな、まさに「目からウロコが落ちる」提言を説く本『里山資本主義』(角川書店刊)が、この2月に「新書大賞2014」を受賞しました。累計発行部数は27万部に達し、今も快進撃が続く同書ですが、「里山資本主義」はこれからの日本、そして私たちのくらしにどんな変化をもたらすのか? 著者の藻谷浩介さんにききました。

アベノミクスという「洗脳」を解け

――本書では、お金が全てを支配するかのごとく振る舞う「マネー資本主義」を補う、または場合によっては取って替わることも可能な仕組みとして「里山資本主義」を提唱していますね。全国各地の里山は、水、食料、燃料をほとんどタダで供給できる「休眠資産」であり、これを人のつながりをベースに活用することで、マネー資本主義では担保出来ない「安心」や「信頼」が手に入る、ということになるでしょうか。本書の刊行を通じて今、日本にどんな変化が生まれていますか

本書のもとになっているのは、NHK広島が制作した、中国山地の里山で元気に活躍している人たちを紹介するテレビ番組です。それだけですと里山活用の先端事例の紹介にとどまってしまうわけですが、そこに私が少し引いた視点で、事例の背後には普遍的な原理があって、それを取り入れた先に都市住民を含めたわれわれの未来もあることを解説しています。

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藻谷浩介さん 地域エコノミスト。平成合併前の国内3200市町村すべてを私費で訪問し、2000年頃より地域振興をテーマに精力的に研究・著作・講演を行う。日本総合研究所調査部主席研究員、日本政策投資銀行特任顧問。『里山資本主義』に先立つ著書『デフレの正体』(角川oneテーマ21)は発行50万部を記録した

実際問題、この本に紹介されている事例と同じような取り組みは、中国地方以外の全国にも無数にあって、しかもどんどん増えています。そもそも、水と食料と燃料をある程度タダで手に入れましょうなんていうのは、農山村に住んでいる人にとっては太古から常識です。けれども都市部の住民には結構驚きをもって迎えられましたし、当の里山の住人からも「当たり前のことをほめてもらって勇気が出てきた」と言われます。となれば、もっと多くの人がこの本を開いて、里山の価値に気付いてほしいですね。

もっとも、里山では何でも自給自足できてお金は要らない、とか書いているわけではありません(笑)。現実の里山には、日本人全員を無料で養うだけのエネルギー量はとうていありませんが、かといって日本人全員が100%お金だけに頼って暮らす必要もさらさらない。各人ができる範囲で、生活の中に里山的なもの、自給自足的なもの、物々交換的なものを少しずつでも取り込んだら楽しいですよ、と提案しているのがこの本です。

ついに27万部突破!『里山資本主義』表紙
ついに27万部突破!『里山資本主義』表紙

マネー資本主義に浸ってしまうと、「どれだけ稼いだか」で人を評価する癖がついてしまいますが、里山でそういうのと無縁で生きている人は、表情が豊かです。右脳で考えているんですね。それに対してお金や地位を他人と比べながら生きている人は、どうも何かに追い詰められたような表情をしている。目先の数字を追いかけているうちに、どんどん考えが刹那的になっていっているのではないでしょうか。アベノミクスで今だけでも景気が良くなればいい。国債をバンバン発行しても、使用済み核燃料を積み上げても、誰かが帳尻を合わせてくれるだろうというふうに。

そもそも、マネー資本主義の下で国民全員が国際競争しなきゃいけないというのは妄想。それを洗脳解除しようというのが本書の狙いです(笑)。競争、競争と囃している連中自身、国際競争のことがわかっていない。彼らの言うとおりに円安にしたら、私が安倍政権発足当時に警鐘を鳴らしていた通り、日本は経常赤字になってしまいました。資源を輸入に頼る国が、通貨安になれば苦しむのは当たり前。戦前の日本もそうだった。

本当に競争力を高めたかったら、円安誘導で日本の商品を安売りするのではなく、商品にブランド力があって円高に耐えられる企業を増やさなくてはいけません。そして輸出産業に無関係な大多数の人たちも、ささやかながらできることとして、里山資本主義を実践してほしい。

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