御年86歳、現在も描き続ける日々

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増田善之助さん。笑顔がとても素敵です。

遡ること50年ほど前、増田さんが地図を描きはじめたのは20代後半のことでした。きっかけをたずねると「娘が産まれたばかりの頃、乳母車を押しながら散歩をしていた時、ふと“道標”の存在が気になって。その“道標”に記されていた街道を調べていくうちに、郷土史に興味が湧いてきたんです。それをまとめる方法として地図を作るようになりました」と増田さん。地元、葛飾の地図から始まり、その後は東京23区へ、多摩地方へ、さらには全国へ、と製作エリアを広げていきます。

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地元である「新宿町と周辺絵図大正初期」を見ながら、ご先祖のお話もしていただきました。

ただ“地図を作る”と言っても、実際には趣味でたやすく手を出せるものではありません。けれども増田さんは地図作りに必要な3つの素地を持っていました。

1つは増田さんの仕事。現役時代は文京区土木部の技術職に就き、神田川の改修工事などに関わっていました。仕事柄、図面を引くこともあり、地図を描くための製図技術があったのです。

2つは子どもの頃から絵を描くのが得意だったこと。増田さんにとっては、調べたことをまとめる手段として、絵地図にするのがごく自然なことだったのです。

そして3つ目は健脚であったこと。子どもの頃、農家である実家の手伝いで、葛飾区金町から秋葉原の青物市場までリヤカーを押して歩くことが日常だった増田さん。休日を使ってのタフな現地調査をこなす体力が十二分にありました。

この3つの土台がある状態で、増田さんが郷土史への興味を深めていった結果がこの100枚超えの地図なのです。

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50年の蓄積がずらっと。地図1枚ごとに色合いや筆のタッチが違います。

1枚の地図が完成するまでにかかる日数は、およそ3ヶ月から半年ほど。その製作の流れについても伺ってみました。

「まずは現地を歩くことから。区史や寺史など文献を調べ、お寺の住職や町の長老など詳しい方にお話を聞いたりもします」とのことで、この調査にかかるのが1、2カ月ほど。そして調査内容を元に下図を作ります。まずは鉛筆で、道や川などのベース地図をトレースし、地名や文章などの情報を全体のバランスを見ながら記入。つけペンや烏口に墨汁を付けてなぞり、下図ができあがります。下図の原図はそのまま保管し、コピーをして裏打ちを施す。そこに色付けをして、ようやく完成!となります。

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下図(左)と色付けされた絵図(右)

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製図道具の数々。右から順に、つけペン、曲線烏口2本、スプリングコンパス、直線烏口。烏口は線を引くのに使用するもの。

郷土史への興味は50年経った現在もいまだ全く尽きることなく、現在は金町・松戸周辺の地図を製作中。これまで何度も製作している地元エリアですが、新たに調査したことや周囲からの指摘を反映させ、修正版を更新しています。修正が簡単なCGの地図とは違い、すべてが手作業。これを増田さんは丁寧にこつこつと続けているのです。

あまりにも緻密で膨大な作業の連続。お話を伺っていくうちに、目の前にある絵地図が途方もない情熱を持った塊に見えてきました……。増田さん、想像をはるかに超えています!

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下図のアップ。インキング製図特有の筆致が伝わるでしょうか?

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