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草が生い茂り、一見、なんの手も加えられていないように見える河川敷や土手。しかし、放ったらかしではなく、「鎧(よろい)護岸」と呼ばれる工法で、自然の姿を留める配慮がされています。愛媛県内子町を流れるこの小田川河畔は、全国に先駆けてもう20年近く前に、景観にも配慮した護岸工事が行なわれた場所。当時の様々な工夫と思いを伺いました。

町並み保存の意識が河川の自然保護へ

スイスやドイツを旅行していると、視野に入ってくる川は緑に溢れていて、どこを切り取っても絵のような風景ばかり。それに対して、護岸工事によって両岸をコンクリートで固められた川しか見ることのできない日本。自然のままを保っている国がうらやましいと思っていました。しかし、そう見えた川も、実は護岸工事が施されていたのです。

スイスやドイツが行なっていたのは、自然の景観や生物多様性を阻害しない「近自然型」または「多自然型」と呼ばれる工法で、1970年代に生まれた川作りの考え方だそうです。日本でも平成2年(1990年)に当時の建設省(現・国土交通省)が「多自然型川づくり実施要領」として策定。

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精鑞産業で栄えた内子の町、「八日市護国」。

この策定のきっかけの1つといってもいい活動が、内子町の多自然型の川作りでした。

愛媛県内子町と言えば、1982年に重要伝統的建造物群保存地区に指定された地域。「八日市護国(ようかいちごこく)」や「内子座」など、建築物が興味を引きます。自然景観に関しても、一歩進んだ考え方で実行に移していたようです。

1985年から行なわれた護岸工事で現場の指揮を取っていた佐野善徳さんに、小田川河畔の案内をしていただきました。佐野さんもタイミングがよかったと言います。

「町並み保存地区に指定されて間もなかったことも良かったと思います。町民も町並み保存や自然保護の意識が生まれていた頃でしたから」

「竹取物語」の竹を切って良いのか……

佐野さんも地元・五十崎(いかざき)の住民。とはいえ、当初は町から指定された工事内容に沿って進めることだけを考えていたのだそうです。ところがある日、竹林の中に「かぐや姫、誕生の地」の看板が立っているのを発見。

「測量のための伐採はすでに始まっていたのですが、『かぐや姫』誕生という場所の木や竹を切っていいのか、と思いました。着手するわずか1時間前に見たその看板で、自分の中に疑問が沸き、工事を一旦、停止することを提案したのです」

看板を設置したのは、地元(当時五十崎町)で「まちづくりシンポの会」の世話人をしていた亀岡徹さんら。亀岡さんや佐野さんたちは、それぞれ、先進的とされる工事が施された各地の河川を見学に行き、自然景観を残した護岸工事のあり方を考えました。1988年には、近自然工法を行なうスイスから講師を招き、シンポジウムも開きました。

「日本の川は、モデル河川と言われるところでも、同じ川の上・下流なのに場所によって仕上がりがまったく違う。それは工事年度によって工法が変わるため。それでいい(気がつかない)と地元の人たちも思っているんですね」

そのことに違和感を感じ、長いスパンで完成されていく工法、という考えを強めたそうです。そして組み上げた工事内容の素案を持って行政と住民への説明会を開く。全て切ってしまうと味気ない風景になるところ、10年後、20年後の風景を想定して、絵に起こし、理解してもらうことに務めたそうです。

自然や文化としての価値を気づかせてくれた竹林は、育つのが早いため放っておくといわゆる竹やぶとなり、危険な場所にもなりかねず、また整備し続けると労力がかかりすぎるため、結局、整理してしまうこととなったのですが、地元の人たちがリクレーションに活用できるスペースとなりました。

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竹林を整備した場所で、住民がBBQを楽しむ。写真提供:佐野さん

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