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文化のココロ

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箸の持ち方がヘンな人をたまに見かける。個人的には「それも個性」という見解だが、当事者のなかには悩んでいる人もいるようだ。今回は、そんな人たちが箸の達人に「正しい持ち方」を習う様子を活写するレポート。僕自身はフツーの持ち方なので、修学旅行生を引率する先生の気分で彼らに同行しました。

様々な持ち方がある

と、その前に。知人という知人に「箸の持ち方ヘン?」と聞いて回ったところ、想像以上に「ヘン」と答える人が多かった。下の写真は彼らから送ってもらったもの。どれもオリジナリティあふれる持ち方で、感動すら覚える。

Iroiro

それぞれ工夫を凝らしてフォームのハンディを克服しようとしているが、やはり麺類は食べづらいらしい。また、「人前では汚く見えないようにアレンジする」という変幻派や、「間違っているのは知っているけど持ち方を変えるつもりはない」という強硬派など、己と向き合うスタンスは様々だ。

4人の生徒が集結した

というわけで、「持ち方がヘンだと自覚して」おり、「機会があれば直したい」と思っている4人がマイ箸持参で都内某駅に集まった。ここからほど近い場所にレッスン会場となる喫茶店がある。

Eki
自己紹介代わりに持ち方を披露しあう

Kissa
レッスン会場の喫茶店

めいめいドリンクを注文したところで、はい、それでは本日の生徒さんを紹介しましょう。

水野さん(25歳)。システムエンジニア。「父が自信を持って教えてくれた持ち方なんですが、やっぱりヘンですよね?」

Mizuno1
居酒屋で唐揚げをしょっちゅう落とします

デイリーポータルZのライターとしておなじみの山野さん(23歳)。「鉛筆の持ち方に似ています。おかずをうまくつかめません」

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うまくつかめないせいで食が進まないこともしばしば

高井さん(32歳)。メーカー勤務。「地味に間違っているみたいで、周囲の人からときどき指摘されます」

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「ご飯の食べ方が汚い」という理由でフラれたことも

渡邉さん(25歳)。三味線プレイヤー。「左利きです。小指を駆使するのがポイント。豆とかも普通につまめるんですけど」

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鉛筆は右で持ちますが、箸はなんとなく左のままです

いずれも、親や先生による矯正指導をすり抜けて今に至る持ち方だ。4人揃って…

Seiretsu
箸(がうまく持てない)レンジャー!

先生の登場

さて、今回レッスンをしてくださるのは、食事マナーに詳しいフードプロデューサーの小倉朋子さん。「日本箸文化協会」の代表でもある。

Sensei
よろしくお願いします

「世界で箸を使うのは6カ国1地域。人口でいえば約3分の1は箸食文化なんです。でも、これを日本では道具としてだけではなく、しつけや思いやりなどにつなげて考えています。たとえば、『突き立て箸』『振り上げ箸』『ねぶり箸』などマナー違反とされる作法にも、すべて理由があるのよ」

ふむふむ。

「神様に供えるものを手でつかむのは失礼だから、というのが箸のルーツという説も。もともとは、根元がつながったトング状だったといわれています」

Yamanowatanabe
熱心に話を聞く生徒たち

「つかむ、かき混ぜる、割く、剥がす。あらゆる動作をこなすという意味でも箸はすごいんです。焼き魚を箸だけできれいに食べられるようになれば一人前。また、正しく持てると思っていても、実はちゃんとできていない人も多いんです。だから、日本箸文化協会では正しい持ち方とポイントの指標を出しました」

いよいよ実技タイムに

なるほど。そして、レッスンは実技タイムに入った。まずは先生が「正しい持ち方」のお手本を見せる。

Otehon
名前入りのマイ箸を美しく持つ小倉さん

以下は、日本箸文化協会オリジナル指標にもとづく正しい持ち方使い方。

「中指を上の箸と下の箸の間に入れます。親指は上の箸をそっと支えるかんじ。開くときは中指で上げて、閉じるときは人差し指で下げて」

チェックポイントは先端がピッタリと閉じるかどうか。これがきでないと小さいものがつかめない。その際、箸の頭部分は3cm程度開いている。

「正しく持てばきれいな二等辺三角形ができます」

Lesson
ドリンクしか注文していない

Mizunoshidou
ここをピッタリ閉じて

「正しい持ち方で開く・閉じるができるようになれば、こんなふうに箸の先端をいい音でカチカチ鳴らせるはず」

Senseikousoku
肉眼で捉えるのが難しい先生の箸アクション

ところで、石原さんはどうなの?

厳しいレッスンの様子を参観日の父兄気分で見守っていると、先生が突然こっちを向いて言った。「ところで、石原さんはどうなの? 電話で『僕はちゃんと持てますから』って言ってたけど」

この展開は想定外である。緊張しつつ、いつも通りの持ち方を示した。「ちょっと動かしてみて」。緊張しつつ、いつも通りに動かした。

Ishiharalesson
個人的にはここでレッスンのクライマックスを迎える

「薬指が余計な動きをしているけど、まあ大丈夫みたいね」。よかった。

「これまで私が見てきたなかで“正しく持てる”人は3割いません。さらに“美しく使いこなせる”人となるとたった1~2割ですね」

レッスン終了

開始から30分、4人ともずいぶんうまくなった気がする。先生も言う。「皆さん、いいかんじ。センスあるわよ」

こうして、レッスンは終わった。20年、30年の長きにわたって体に染みついた持ち方を急に変える難しさは、4人が浮かべる疲れた表情からも推し量れる。いやあ、皆さん本当にお疲れさまでした。

しかし、最後に先生が言った「毎日練習すれば3週間ぐらいで直るはずよ。どうしてもキツかったら、食事メニューの中で一品だけは正しい持ち方で食べるとかでもいいからね」という言葉はずいぶん励みになるはずだ。

後日談

最後に、レッスン前の持ち方が一番哲学的だった水野さんに「エジソンのお箸」という練習用箸を贈呈。リングに指を入れると自然に正しい持ち方になるというアイデア商品である。矯正活動の一助にしてください。

Ejison
1575円。東急ハンズで購入

Ejisonmotsu
持てば自然と美しい二等辺三角形に

数日後、水野さんからメールが届いた。「あれから毎日練習しています。父にも正しい持ち方を教えてあげました」。モニターの前で、ひと筋の、涙が、流れた。

Nan
巨大なナンもこのとおり

Chichishidou
父を指導する水野さん

なお、小倉さんが代表を務める日本箸文化協会では、「箸検定」というものを実施している。興味のある方は下の協会サイトから詳細をご覧ください。

小倉朋子さん公式サイト
http://totalfood.jp/

日本箸文化協会
http://www.hashi-bunka.jp/officialapproval.html


石原浩樹

石原たきび(いしはらたきび)
1970年岐阜生まれ。フリーランスで『R25』および書籍ほか編集。飲み会のカラオケでエレカシを歌うと以降の記憶が飛ぶというジンクスが。隣家のミーちゃん(ネコ)を全力で懐柔中。たき火の会主宰。俳人(見習い)。


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